エディター、ライター、怪しい雑魚釣り隊隊員などをやっている齋藤海仁(さいとうかいじん)のブログです。
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日本にまだ山の暮らしがあったころ@福島立實
たまにはマジメな話をおひとつ……。
いま発売中の『Fishing Café』25号。

FC25

その特集「釣りと宿」の「釣り名人の宿」編のため、
乗鞍高原にある「ペンション・チムニー」の福島立實さんを取材した。

福島立實

福島さんは今や絶滅寸前である安曇村のイワナ漁師の末裔で
知る人ぞ知るテンカラ釣りの名人である。
テンカラ釣りとは、日本の伝統的な毛バリ釣りのこと。

津留崎健撮影風景

撮影は釣り界の巨匠、津留崎健さん。釣りの写真で右に出る人はいない。これは津留崎さんの取材姿を写した貴重な1枚? 取材時期は禁漁間近の9月末でした。

福島さんとは『考える人』(新潮社)の連載
「乗鞍囲炉裏話」が縁で知り合った。
釣りについてももちろんだけど、
名人の話は何から何まで面白い。
福島さんはついこの前まで日本にあった
〈山の暮らし〉という生活文化の生き証人。
実体験に根ざした山の知恵は
人間が生きるということの原点を教えてくれる。

福島さんの深い話は
ブログなんかじゃとうてい紹介しきれない。
なので、印象に残った話をひとつだけ。
それは「結(ゆい)」という社会制度。
とても長くなるけれど、
今回は『考える人』の連載の結末を引用させていただきます。
これを呼んで福島さんに興味を持った方は
ぜひ「ペンション・チムニー」に足を運んでください。
チャーミングな笑顔と抜群の話術で暖かく歓迎してくれますよ。
料理も最高です。

ペンション・チムニー
〒390-1520長野県松本市安曇乗鞍高原
0263-93-2902

なお、「乗鞍囲炉裏話」は『考える人』の
04年春から冬の計4号分に掲載されました。

**************

便利さを追求するばかりに
自然も世の中もどんどんおかしくなる。
山に暮らしていると、
どうしてそれに気がつかないんだろうと思うよ。

都会に行くと本当に便利。
外に一歩出ればたいてい何かある。
隣近所に無関心だから変な噂も立たない。
だから逆におかしな事件が起こるんじゃないか。

ここじゃ外で飯食うったって、
車で遠くまで行かなきゃならないし、
たとえば俺が二、三日外食したら
「カミさんにでも逃げられたのか」ってすぐウワサになる。
いや、冗談じゃない。
乗鞍で人の家に火付けようものなら
絶対に生きていけないが、
都会は放火して捕まってもまた同じところで暮らせる。
ここらへんが都会と田舎の一番の違いだね。

確かに山の暮らしもずいぶんと変わった。
言っちゃいけないのはわかってるけど、
昔はよかったよ。ホントによかった。

俺が一番寂しいのは「結」がなくなったこと。

これは助け合いの制度で、たとえば、
俺がどうしてもAならAに手伝ってほしいことがあるとする。
そのときはAに「結を貸してくれ」っていうと、
無料で手伝ってくれる。
すると、俺はAに結を借りたわけだから、
釣りでもなんでもして返さなきゃいけない。
結の貸し借りは一対一でも、巴でもいい。
手形みたいなものはなくて単なる口約束。
それでも十分うまく機能していた。

結局ね、昔の乗鞍は自分達でソバを作ったり、
野菜を作ったり、普請したりしてほとんど自給自足。
お金のいらない結だけの集落だったんだ。

それが大きく変わったのはスキー場が出来てから。
みんな旅館とかペンションとかの商売を始めただろう。
とどのつまりは商売敵になって、
心が全部離れ離れになった。
今じゃ俺より下の世代に
「結って知ってるか?」って聞いても誰もわからない。

俺が悲しいと思ってるのは制度がなくなったことじゃなくて、
そういう精神がなくなってしまったってことなんだ。

若い人たちは気がつかないかもしれないが、
自給自足をしなくても生きていける、
すなわち、乗鞍が貨幣経済に組み込まれた代償は
見た目以上に大きかった。

自給自足だと知恵がないと生きていけない。
世の中が分業制になったせいで、
山の知恵もいらないくなって、山に入る必要もなくなり、
今じゃ俺みたいな山の人間も絶えていくばかり。

でも、人間は今の暮らしでも十分に裕福だろう。
これ以上はもう必要ない。
自然破壊にしろ、地域社会にしろ、
もう気がつかないといけないんじゃないかと俺は思ってるよ」
(『考える人』04年冬号より)
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コメント
この記事へのコメント
記事、読みました。
早速、買ってきました、Fishing Café。
‥これが都会の便利さ。

釣りの宿って、海の側だけじゃないんですよね。
チムニーの囲炉裏にあたりに行きたくなりました。
2007/01/22(月) 18:18:15 | URL | 竜太 #-[ 編集]
コメントありがとうございます
竜太さま、ようこそ当ブログへ。

福島さんは本当に魅力的な方です。
チャンスがあったら、ぜひチムニーにおいでください。テンカラもなかなか面白いですよ。梅雨が明けてからの釣りですが。
2007/01/23(火) 02:15:12 | URL | 海仁 #-[ 編集]
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